はじめに
がんは1981年から我が国の死亡原因の第1位であり、健康政策の中で最も重要な対策の一つとして位置付けられ、各自治体で対策事業が進められています。今回の調査では、東北、関東、九州地方の12自治体のご協力のもと、各地域における疾病構造の違いやがん(新生物<腫瘍>)に係る医療費等の課題を把握することで、より効果的な対策事業につなげることを目的に調査を実施しましたので、その結果の一部をご紹介させていただきます。

ICD大分類別の主な傷病項目における一人当たり医療費(H30年)の調査を実施しました。
調査実施自治体のうち、東北地方のA県では、いずれの市町村においても「新生物<腫瘍>」の一人当たり医療費が最も高くなっています。
一方、九州地方のC県もおいては「精神及び行動の障害」が最も高い結果となり、地域によって医療費の課題及び疾病構造の違いが示されました(図1)。

また、各自治体の「新生物<腫瘍>」における一人当たり医療費と高齢化率の関係をみると、本調査において、最も高齢化率の高かったA県の4市町村においては、調査実施自治体の一人当たり医療費平均値(206,755円)を上回る結果となりました(図2)。
今後、さらに高齢化が進む自治体においては、健康政策及び医療費適正化の観点からも、がん対策事業の位置づけがより重要になると考えられます。
新生物<腫瘍>係る医療費等の調査結果
新生物<腫瘍>に係る医療費構成比は、調査実施自治体の平均値が17%となりました
また、各県の医療費構成比における4市町村平均値をみると、新生物<腫瘍>の占める割合は、A県では19%、B県では17%、C県では14%となり、地域によって異なることがわかりました。
さらに、構成比率の最も高いA県自治体②と一番低いC県自治体⑫とでは、9%の差があることがわかりました。
県別の全自治体の構成
A県4自治体
B県4自治体
C県4自治体
部位別の調査結果
調査実施12自治体様の新生物<腫瘍>に係る医療費の調査結果を部位別にお示しします。
今後の展望
前述の地域差の要因として、各自治体における年齢構成や自治体によるがん対策における実施内容及びその期間、医療提供体制の違いなどが考えられます。
今後は、上記の各要因を踏まえ、地域住民の健康寿命の延伸に資するがんへの取組として、さらに考察を深め、自治体・保険者として取りうる対策をご提案したいと考えております。
また、自治体・保険者のみならず、地域の医療関係者と連携した取組として、データ分析によるPDCAサイクルに沿ったがん対策事業を推進し、地域ごとに異なる健康政策における課題の解決に結びつくよう、努めて参ります。
最後になりますが、今回の調査に快くご協力いただきました自治体関係者の皆様に心より感謝申し上げます。